秋の関東旅行記 その1 (髭編)


まずは新しくなって黄色カラーになった特急いなほで新潟へ。

新潟からスピーディーなタイムマシーン上越新幹線で高崎へ。

高崎は富岡製糸場やSLを推したポスターが飾ってあって富国強兵時代のノスタルジーを前面に打ち出してる印象だった。正直言って富岡製糸場は面白くなさそうだが、SLのポスターを見てるだけで血が騒ぐのは男の子の性質だろうか。鉄オタにはたまらないだろうな。この駅は。

高崎から湘南新宿線で横浜へ。今回の旅の最初の目的である髭のライブに行くのである。
その前に横浜駅西口にある有隣堂コミック王国へ寄り道する。ちなみにこの書店には「船を建てる」の鈴木志保先生のサイン会のために一度だけ来た事があるけど、今は場所を移転していた。
思春期ビターチェンジ(1) (ポラリスCOMICS)思春期ビターチェンジ(2) (ポラリスCOMICS)思春期ビターチェンジ(3) (ポラリスCOMICS)
先月、大好きな漫画「思春期ビターチェンジ」のサイン会が行われたのが、この書店で、実は先月このサイン会に行くべく電話で予約も入れていたのだ。しかしスケジュールがどうしても合わずに泣く泣くキャンセルの電話を入れたのだった。1ヶ月後に来ても当然サイン会には間に合わないのだが、サイン本の販売やイラスト色紙の展示など、サイン会の残り香のようなものは見られるかも、という未練がましい気持ちを持って行ってみたのだが、凄かった。力の入ったコミックの宣伝がそこかしこにディスプレイされ、本棚の上には漫画家のサイン色紙が書店内をグルリと一周するように飾られていて、その数は数百枚はあるのではないか。先日秋田県にある、ミライア本荘店に行って「黒子のバスケ」や「ねじまきカギュー」の直筆サインを見てわーわー言ってきたのだけど、さすが偵都ヨコハマ。その比ではない。伊達に頻繁にサイン会はやってない、と思わせる重量級の漫画オタク向け専門店だった。ところで、肝心の「思春期ビターチェンジ」のサイン本や色紙はあったのかというと、探したけど見つからなかった。こういうとこは回転が早いのだろう。弱小版元だし。

店の外には来月の「高杉さん家のおべんとう」のサイン会の告知ポスターが貼られていて「うらやましいな、くそうくそう」と呪詛を吐きつつ、中華街に移動する。

中華街から山下公園。何回来てもおのぼりさん感覚に陥ってしまうきらびやか過ぎる場所である。

妖怪ウォッチのコマさんみたいに「もんげーズラ…」と呟きながら見て回る。

山下公園はAVの撮影でよく使われる場所なので「もしやこのベンチが××さんが○○してたベンチでは・・・」とアニメの聖地巡礼みたいな気分を味わう。

夜風が気持ち良い。あと蚊に刺された。3か所も。

横浜CLUB LIZARDで髭"素敵な闇"ツアーを見る。見に来た動機としては、数日前eplusで調べた時にたまたまこの日のチケットが売ってたから・・・、というのもあるが、3月に行われた髭VSベルハーのイベントが見られなかった腹いせと、昨年出たアルバム「クイーンズ、ダンケシェーン・パパ!」がとても素晴らしかったからである。
髭を好きになった切欠は3枚目のアルバム「Chaos In Apple」である。カートコバーンのようなフロントマンがポップな楽曲に悪意とユーモアをまぶして全方位にぶちまける、そのスタイルは、頑張れソングや癒しソングで溢れてた日本に対する対症薬として、とても痛快で気持ちよくて、このアルバムは非常によく聴いたものだった。しかしその後レーベルを移籍したり事務所を離れたり初期からのプロデューサーでありライブでは重要なギタリストでもあったアイゴンが離脱したり古参メンバーでドラムスのフィリポが脱退したりスヌーザーは廃刊するしロキノンは新人バンドばかりプッシュするようになるし(これは通常営業だけど)で、よくある中堅バンド解散のカウントダウンに入ったのかな、と勝手に心配していたのである。しかし最新作の「クイーンズ、ダンケ・シェーン、パパ」はそんな不穏な感じのしない、ポップでフレッシュな最高傑作と言っていい出来なのである、このギャップは何だろうと気にはなっていたのだ。

QUEENS, DANKE SCHON PAPA! (初回盤)

QUEENS, DANKE SCHON PAPA! (初回盤)

もう一つは、3月に渋谷クラブクアトロで行われた髭とBELLRING少女ハートの対バンイベントである。個人的にロックイベントにアイドルが入るのは好きではないし「アイドルの方がある意味ロックだ」式の物言いにはアイドル側のコンプレックスしか感じないので絶滅して欲しいと思ってるのだが、この2組超行きたかった!むりやりこじつければ共通点があるようにも思える。「楽曲が良いこと」「UK・USのオルタナティブ音楽を最大の参照元にしている事」「今のアイドルやロックが作りがちな超高速ビートに頼らない曲づくりをしていること」「世の中舐めてるような得体の知れない感じがすること」「こいついらなくね?という無駄なメンバーがいること」などなどである。実際に行われたライブの感想をWEBで読むと、アンコールでは髭がベルハーファンにお願いしてアイドル流のコールを即席で打つなど、ロックとアイドルがクロスオーバーした感動的な現場だったらしい。悔しくてWALKMANでその時のセッストリストを作ってずっと聴いていたほどである。

BedHead

BedHead

10カ月越しの思いが詰まった髭とBELLRING少女ハート、まずは髭のライブを見た。
300人規模のライブハウスは満員で、客は女性が8割その他が2割という感じ。初めて見る髭のライブはとても盛り上がっていて良かった。途中「こんなに湿気あったっけ?」とメンバーが言うほど熱気がムンムンとしていて、序盤に「ブラッディマリー、気をつけろ!」を演奏した時からスイッチが入り、ギターの振り付け指導からの「ハリキリ坊やのブリティッシュジョーク2」ではwow wow wowの大合唱が起こり、「ハリキリ坊やのブリティッシュジョーク」では全員がジャンプして叫び「それでは皆さん良い旅を」で熱気は最高潮に達し「テキーラテキーラ!」ではドラムのコテイスイが客の上を漂って行く、いわゆる代表曲の数々を惜しみなく披露するセットリストで、自分が今まで独りでWALKMANで聞いてきた楽曲が、ライブハウスの現場でクラウドを熱狂させてる光景を後ろの方で見て「そうだ!これが見たくて来たんだよ!」と満足げにうなずいていたのであった。あとは個人的に好きな「マヌケなクインテット」を演ってくれたのが良かった。それに中盤のブリッジになっていた大好きな「三日月」。そして「虹」では、超好きな曲過ぎてたまらずに手を振り上げて全編歌ってしまった。
なんといっても白眉だったのは、10周年記念本「素敵な闇」に収録された新曲。
ライブ冒頭で歌われた「セメタリー」、中盤で披露された「なんて素敵ないびつ」本編の最後の「闇をひとつまみ」の3曲である。

3曲ともスローテンポな曲だけど、バンドの核にあるセンチメンタリズムと力強さが際立ってくる名曲だ。バラードなのにロックバンド的な熱量が凄い!!
海外でもArctic MonkeysやVampire Weekendが意識的にグッとテンポを落としてバンドの奥の深さを見せつける新作アルバムを出して評価を上げてるけど、髭も今そういうモードに入ってるのかな、と思った。でも途中で披露された”半熟の新曲”はパーティーチューンだったからなー。このバンドの未来は正直分からん。


「闇をひとつまみ」で本編を締めたあとは、アンコールで「王様はロバのいうとおり」をアレンジを全く変えて演奏して意表を付き、そのあと定番曲の「ロックンロールと5人の囚人」と「ギルティーは罪な奴」でフロアーを大いに沸かせて、2時間のショーをハッピーな気分で終わらせた。
終演後すぐに、10周年記念本を買った人向けのサイン会が始まり、ひとりひとりに「本当?ありがとう!」「嬉しいよ。ありがとう!」とアイドルのように笑顔で応対しているフロントマンの須藤寿を横目で見て、今日初めて見るけど得難いキャラクターだなー、と感心した。
基本的にガキ向けであるロックバンドの寿命は短く、ビートルズは8年で終わったけど、髭には長生きのカブト虫でいて欲しいと思った。
地上に出ると横浜の風が気持ち良かった。気持ち良い夜だ。




横浜からの帰りに目黒に立ち寄ってラーメン二郎に行く。
上京するたびにラーメン二郎を1軒ずつ制覇するのが何となく習慣になっているのだ。今回の目黒店は新宿・池袋・神保町に続く4軒目。毎回死ぬ思いをするのだが、しばらくすると再挑戦したくなる。妖怪ウォッチのジバニャンがなんど轢かれてもダンプに突撃して行くようなものだ。目黒店のラーメン(大)600円は、非常にコスパの良いというか、600円でこれかよ、というボリュームで、野菜と麺をかきわけ必死で食べる。

おかげで満腹感と裏腹に具合が悪くなり、這うようにして宿に戻るのだった。馬鹿である。