秋の関東旅行記 その2 (ベルハー編)

昨日は終電で帰って来たが、5時起きして総武線で千葉へ向かう。千葉で名産(?)MAXコーヒーを飲んで一服し、銚子行きの列車に乗り込む、山と田園の風景を見ながらほのぼのするより先に「セイタカアワダチソウの勢いすげーなー」と思った。山形でも数年前から目立ち始めた黄色くて背の高い草だが、関東では遥か昔1970年代に大発生したらしく、帰化植物の繁殖が景色を変えていくのを実感した。トトロの監督が日本の原風景はもう描けないと言った理由がよくわかる。



佐倉駅で降りて、京成佐倉行きのバスに乗る、5分ほど揺られて、佐倉市立美術館で降りる。

わざわざ佐倉市まで来たのは理由がある。長島茂雄でもなくBUMP OF CHIKENでもなく、ご当地ゆるキャラの「カムロちゃん」が目当てである。ゆるキャラがバブリーに量産される2014年の日本であるが、その中でも自分的に断トツでかわいいと思っている「カムロちゃん」の限定グッズを買いに来たのである。

美術館でカムロちゃんグッズを買いこんだ後は、街中を散策。

あちこちにカムロちゃんのポスターやのぼりを発見して嬉しかった。佐倉市は小さいながらも歴史ある町らしく、古い建物が残っているのが良かった、日本の田舎は土健屋が全て掘り起こしていくので、子供の頃の道路や建物は残っていなかったリする。余所の町に来て、昔からずっと更新されてないものが残っているとすごくホッとするのだ。さいわい天気も気候も良く、いい小旅行だった。

佐倉から千葉に戻り東京へ。東京から山手線で目白へ。目白から歩いて日本女子大へ行く。

日本女子大ではこの日「目白祭」という学祭が行われていて、屋外ステージでは女性アイドル数組が出演するイベントを開催していた。出演者はさくらんぼう注意報!、Mary Angel 、ANNA☆S、Jewel Kiss、T!P、ゆるめるモ!。なぜか男だらけの大学のむっさいアイドル研究会が主催してもこうはなるまい、というエッジの効いたメンツなのだ。大学の構内に入ると、芝生のエリアにアイドルオタクの人たちの集結した異世界が広がっていた。込み過ぎず、ほどよい空間だ。ちょうどANNA☆Sのライブの始まる前に着く事が出来た。

ANNA☆Sの存在を知ったのは、今年の三月に下北沢で行われたカーネーションのトリビュートコンサートである。

変名ユニット「うどん兄弟」名義で出演しカーネーションの名曲「Edo River」を歌ったのだが、完全な地下アイドルマナーでのMCやパフォーマンスの異物感に、凍りついていた満員の観客達が、彼女たちの退場後に、いっせいに口を開いて仲間とアイドル論を語り始めたのが面白かった。みんなアイドルには一家言あるんだな、アイドルは人を饒舌にするな、としみじみ思った。それにアンコール「夜の煙突」で再登場し、森は生きているのメンバーと並んでノリノリで踊るANNA☆Sが可愛くて、アイドルには興味があるけど誰を推していいかわからない状態だった自分は、ANNA☆Sか、覚えておこう、機会があったらまたライブを見よう、とその時に決めてたのだ。

というわけで、個人的に待ちに待ったANNA☆Sのライブであった。ライブの感想は「凄い!」の一言である。司会のお姉さんが終演後のトークコーナーで褒めていて同感したのだけれどANNA☆Sの3人の歌とダンスには、エネルギーが満ち溢れていた。まるで新商品の電池のTVCMのように、他とは地力がダンゼン違うと言わんばかりの力強いパフォーマンスだった。7月のアイドル横丁で観客を感動させたという新曲「人生マジもったいないよ!」が、生で聴いたらズシンと心に響く良曲だった。

あと、本人たちのパフォーマンスに負けないくらい、ANNA☆Sのファンの皆さん応援スタイルが一斉に肩組んだりジャンプしたり熱い、熱い。これぞTHE地下アイドルという応援が見れて、3人の少女と沢山のオッサンの生み出す場の熱量の高さに、ちょっとどころじゃなく感動した。あと、不謹慎を承知で書くけどライブの最中に「この子たち、けっこう胸あるな」と思ったら気になってライブに集中できなかった。いやわかります。(宇多丸さん風に先回りフォロー)。女子中高生グループに対しておっさんが性的な目線を向けるなんてあってはならない事です。まして全世界の人が閲覧できるワールドワイドウェブ上でその愚考を開陳するなんて言語道断です。でもですね。サスペンダーの付いた衣装が体のラインを強調してるのだから仕方ないのですよ。悪いのは俺じゃなく衣装なんです。なんかクラスメートの女子テニスとか女子バスケとかの試合を見て揺れる胸に目が行ってしまうボンクラな青春のプライスレスな思い出を彷彿させて、日本女子大の人たちにこんな事考えてるのバレたら校舎の壁に吊るされるだろうな、とかアホな事を考えてたら20分のライブは終わったのだった。大馬鹿である。真面目な感想も言うとカーネーショントリビュートで披露していた「だってLOVE ME DO」が聴けなかったのが残念。MCで告知していた明日のうどん兄弟のライブにも行けたら行こうと思った。

アイドルが退場すると前方のファンも入れ替わる。次に登場するのは北海道のJewel Kiss。ファンの荒っぽさが有名で、東京アイドルフェス(以下TIF)でファンが暴れすぎて会場を破壊しフェスの進行が出来なくなって、以降TIFを出禁になったグループとして自分的に有名である。ネットで見れるJewel KissのTIF屋上ステージでのライブは、地下アイドル文化の「熱さ」を教えてくれる格好の素材だった。BiS「NERVE」、ドロシーリトルハッピー「デモサヨナラ」、Lyrical School「おいでよ」、ももいろクローバー「走れ!」、と並んで、アイドル文化を知るなら必見の動画だと思う。 さて、初めて見る生のJewel Kissは、思ったより(ステージ上の)人が少なかった。自分が見てた動画では7人いた筈だけど、いろいろあったらしく3人に減ってた。しかもまどか☆マギカっぽい魔女っ子テイストの衣装と、舌足らずの喋り方が可愛いロリータグループになっていた。それは想定外だけど、楽曲の良さとオタクの熱さは、やはりかつて名を馳せただけのことはあるなと思った。Jewel☆Kissファンは場所が女子大という事で明らかに手加減してたけど、1曲目からグルグル回りだしたり、ステージ上の「バキュン」の仕草に合わせて全員が倒れたり、「ここ走り回っちゃだめみたいなんでー、代わりに女子大生をナンパしてきて下さーい!」とJewel Kissに振られて、本当に曲間で校舎の方に一斉に走って行ってナンパを始めたり結構なやりたい放題だった。途中から主催者によって芝生にロープが張られて抜けだせなくなり、Jewel Kissの終演後に厳重注意されたのは笑った。若干羽目を外しつつも基本的に陽性のピースフルな時間だった。ファンのおじさん達もしてやったりという笑顔だった。


次に登場したのは、栃木から来た御当地アイドル、T!P(栃木アイドルプロジェクト)。パッと見「ベルハーじゃん!」というような黒のセーラー服の衣装だが、ベルハーよりずっとおとなしい感じ。登場曲に合わせて一人ずつ登場し客に背を向けて立つのが可愛い。前の2組の自由度の高すぎるファンを見た後だと、ファンも少ないし曲調もおとなしく見えたけど、本来これが普通なんだろう。女学生の黒い制服+黒のソックスというかなり俺のような粗末な頭のオタを狙い過ぎな衣装だけど、彼女たちの真っ白い肌がきわだって清楚感とカルト感が高まっていた。「綺麗なベルハー」という感じ。ダンスは緩いけど全員で手を後ろに回してサイドステップを踏んでるだけで非常に画になる。20分のあいだに、自分がセーラー服にグッとくる属性だと言う事を思い知らされました。


最後はゆるめるモ!。ベルハーと並ぶ、サブカル系アイドルグループの代表格である。意外にも、学園祭は初めてらしい。「女子大だから女性の前で歌うのかと思ったらいつもの客だった」「お前らキモい!」といいながらライブは進行。まず驚いたのが、人が少ない。公式画像では8人ぐらいいるはずなのに、ステージ上に居るのは4人だった。いろいろ事情があるらしいが、そのせいで歌割りが崩れてミスが多かった。正直期待してたパフォーマンスには程遠いガッカリな出来で、本人達もそれを歯がゆく感じてるのが伝わってきた。とりあえず、今日いる人の顔と名前は一致させて帰ろうと思い、けちょん、ようなぴ、ももぴ、あの、の4人を覚える事に注意しながら見た。「あの」という名前の子のやる気のないパフォーマンスがめちゃめちゃ印象に残った。衣装が良かった。これまでポリシックス風のニューウェーブな衣装だったのが、先週から新ツナギに衣装チェンジしたらしく、地味な色のツナギにメンバーそれぞれのカラーで電波イラストが描いてある、とてもユニークな衣装だった。というか・・・再結成後のユニコーンじゃん!(ユニコーンはカーキ色or紺色のツナギに星座柄だけど)ユニコーンのファンとしてはこういうオマージュは嬉しい。

個人的に超大好きな「Sweet Escape」はやらなかった。(まぁ20分の持ち時間で10分超の曲はやらないわな)

後半3曲は「逃げろ!」「スキヤキ」「なつおんぶるー」という俺でも知ってる代表曲3曲で、ベルハーの運営の田中鉱二氏が、ゆるめるモ!のライブで一人で一心不乱に踊ってた、という故事を思い出し、踊れば何か見えてくるのかも、と思い、ステージ後方で踊ってみたりした。横を見るとANNA☆Sの3人も踊りながら見ていた。
出演アイドル達がblog用の記念撮影中。
ゆるめるモ!の終了と同時に、日本女子大をそそくさと離れる。せっかく合法的に学内に入れる貴重な機会だからいろいろ見て回れば良かった。


池袋まで歩き、西武池袋線で江古田へ行く。

江古田のライブスペース兔亭で行われる、コレカラクルーズ第4回公演「キラキラ☆KILL a KILLER」の16:30の回を見るためである。ヤクザのオッサンとアイドルの入れ替わりがメインの演劇だけど、笑いあり涙ありの60分間で、とても楽しかった。とても狭い会場だけに俳優の息使いの伝わる臨場感があって良かった。劇の冒頭、暗転してから一転、目の前でピンクのフリフリの衣装のアイドル3人組の歌とダンスが始まって度肝を抜かれた。中盤、人格が入れ替わっておっさんの魂が入ってしまったアイドルが4日後のショーまで振りが覚えられるのか、というドタバタに笑い、生き別れの親子の絆を描いたシーンではホロリとさせられ、入れ替わりネタの転がし方に唖然とし、最後のしめくくりの、ドタバタを乗り越えて全員がちょっと良い人になって、アイドルが「キラキラ」を歌うクライマックスでは、不覚にも歌を聴きながら涙を流してしまった。我ながら脚本の掌でいいように転がされまくったが、笑えて泣けて気持ち良い余韻を残してくれた良い劇だった。これ映画化して欲しい。ヤクザのおっさんがアイドルになるってキャッチーだし、ホイチョイさんあたり話をかけてこないかな。終わった後キャストが出てきて懇親会みたいな空気になったので退散して次の現場へ。昼にアイドルを見て、夕方アイドルが題材の演劇を見て、またアイドルの現場に向かう、まったくなんて一日だ、と思いながら目黒へ行く。

目黒の鹿鳴館というバンドブーム期からある古いライブハウス。ここでBELLRING少女ハート後藤まりこのツーマンイベントが行われる。今回の旅行のメインイベントの一つなので緊張して階段を下りて行った。

BELLRING少女ハートを好きになったきっかけは、去年の11月に秋葉原グッドマンで行われたアイドルイベントである。秋葉発-山形行の帰りの夜行バスまでの時間潰しにアイドルイベントを見て行こうと思って見たライブだけど、とても楽しかった。どちらかといえばロック寄りなアイドル(バンドじゃないもん!エレクトリックリボン)との3マンだった。テレフォンズの石毛が作った曲を披露していたバンドじゃないもん!ブランキージェットシティーの「赤いタンバリン」をカバーしていたエレクトリックリボンも楽しかったが、圧倒的に衝撃的だったのがBELLRING少女ハートのパフォーマンスだった。特に最後の「サーカス&恋愛相談」「The Edge of Good Bye」「Wide Mind」の3連発が客の沸き方も含めて個人的に「こんなの初めて見た!!」とインパクト大で、山形に帰ってからCDアルバムを通販で購入して憑かれたように聴きまくったのだった。その後の1年間はニコニコ動画とかでTIFのスマイルガーデンや@JAM EXPOの横浜アリーナで歌ってる姿をネット中継で見て、その場に自分がいない事を悔いていたのだった。念願かなってやっと見れる。ワクワクしながら超満員のお客に混じって開演を待っていた。200人収容のフロアーは後藤まりことベルハーのファンでパンパン。最初から場の熱量が凄い。ここに居るのはきっと2桁、下手すると3桁はベルハーを見にきている猛者たちなんだろう。

先に登場したのはBELLRING少女ハート。黒セーラー服に黒い羽根を付けた6人のメンバーがステージに現れポーズを取ると、観客が待ってましたとばかりに前方に押しかけていく。そして音楽が流れ、ショーが始まった。
1.ボクらのWednesday
1曲目は彼女たちの代表曲「ぼくらのWednesday」だった。昭和のグループサウンズと歌謡曲が混ざった曲調と、聴いてて不安になる上下するメロディーが、他に無いベルハーならではの個性を確立させている名曲である。早くも前方の客は合いの手を入れたりしてクライマックス級の盛り上がりである。しかし、こんな曲調なのにどうしてこんなに盛り上がれるんだ。凄いぞ、ここのお客。
2.World World World
アルバム「Bedhead」の1曲目。ドンタタドンタンという人を食ったドラムで始まる、技巧派投手の投げるスローカーブのような変な曲である。この曲でベルハーの6人は玩具のピストルを構えるのが恒例だ。自分がベルハーを知ったのは、2013年のTIFのレポート記事でセーラー服+カラスの羽根+ピストルというサブカル系のフックにあふれる写真を見たのがきっかけだったので、初めてピストル撃ってる姿を生で見れて興奮した。曲の最後に観客とメンバーの声が不協和音を奏でるノイジーなパートがあるのだが、これを生で聴けてゾクゾクした。
3.The Edge of Goddbye
絶叫パートからの聞き覚えのあるギターのリフで、会場はこれ以上ないほどの盛り上がりに突入した。ライブでは最後に披露される事の多いベルハー最強のブチ上がりソング「The edge of Goodbye」である。まさか3曲目で聴けるとは!観客が押し合いへしあいのモッシュを始める。前日の髭のライブでも、フロアーがぐっちゃんぐっちゃんになる瞬間が何度もあったけど、今日は男性客が9割を超えているせいか、それ以上に盛り上がりまくっている。目の前で踊ってるベルハーと、ダイブするお客を見ながら、涙が止まらなくなった。これを体験したくて山形から来たのである。
4.yOUらり
3曲目にしてピークが来た後は、ややクールダウンして「Bedhead」の収録曲「yOUらり」。オルガンの音色がフィーチャーされたサイケポップっぽい変な曲である。前回、秋葉原でベルハーを見たときは、ステージが低くてバルハーが何をやってるのか全然見えなかった(柵に乗り出してる時以外)けど、今日の箱は6人のダンスが良く見える。ヘタだヘタだ言われるけど、生で見ると全然悪くない。むしろ格好いい。去年は加入直後でダンスについていけてなかった「カイ」という子も見違えるほど堂々とした踊りだった。全員がピョンピョン飛び跳ねるとこや、サビの振りが可愛かった。
5.Crimson Horizon
アルバム後にEpで出た新曲である。これもかなり人を食った曲調で、なんだか渋谷の宇田川町が舞台の探偵ものドラマのサウンドトラックに入ってそうな曲である。ベルハーの作曲者がベルハーに持ちこんでくる音楽イディオムには、どこか宇田川町のDJが流してそうなレコード発掘してるような感じがあると思う。宇田川町なんて言ったこと無いけど。ダンスが楽しそうだった。
6.kUMA GOQLI
これはレアな選曲だろう。日本昔話のエンディングみたいな歌詞だがメロディーが不安定で、頭のおかしいお母さんが子供をあやしてるナイトメア子守唄みたいな曲。赤い照明でゆっくりと動くベルハーの6人が印象的だった。
7.Starlight Sorrow
この曲のイントロが始まった瞬間に泣いてしまった(本日2回目)。@JAMエキスポの横浜アリーナでも披露していた新曲。ストレートにカッコ良い曲。イントロからAメロの流れが本当に好きだ。
8.ダーリン
「Bedhead」収録のXTCみたいなサイケ調の曲。昨日の髭もそうだったが、ハイテンポでぶちあがる曲も何曲もあるけど、むしろミディアムテンポの曲で、グループのエッジが立ってくるのがすごく良いと思う。
9.サーカス&恋愛相談
MUSEを彷彿させる非常に切迫感のあるドラマティックな曲展開で、去年秋葉原で見た時にも、心をわしづかみにされた曲。カラスの羽をぶんぶん振りまわすパフォーマンスを全力でやってるのが好き。
10.Rainy Dance
現時点で最新の曲。今月初めのShowroomでこの曲を初披露しているのを見た時「絶対ベルハーを見に行こう!!!」と決心した曲だ。ふだんヒネくれてるベルハーにしては直球で、現場で受けそうなハードロック+歌謡曲の曲なんだけど、バルハーがやるとすごい格好いい。考えて見れば真っ黒なゴス調の衣装だからハードロックがハマるのも無理は無いよなと思った。
11.C.a.n.d.y.
この曲がかかった時の照明が良かった。逆光に浮かび上がる6人の姿が、余りにも格好良すぎて泣いてしまった(本日3回目)。最初聞いた時は「song2やん」と失笑していたのだが、ライブでやり続けるうちに化けたのだろう。非常に堂々としたキラーチューンになっていた。
12.WIDE MIND
最後は西部劇とイエローサブマリン音頭をマッシュアップしたような変な曲「WIDE MIND」。最後にこの曲を演るのはオアシスがライブの最後をビートルズのカバーでサイケなノイズとナンセンスな歌詞ですべて混沌に放り込んで終わるようなものなんだろう。ただカッコいいままでは終わらない感じがいいですな。

アイドルのショーにつきものの緩い告知も自己紹介も無しで突っ走った圧倒的なライブだった。11ヶ月間ベルハーが見られなかった飢餓感は今日のこのショーですっかり埋め合わされた気がした。お客も最高だった。若いのも老いてるのもイケメンもブサイクも一緒にドロドロになってモッシュしてるのを後ろで見ていて、いま音楽の最高の現場に立ち会っていると感じたりした。

ベルハーの後に登場した後藤まりこ。ミドリというロックバンドで活動してたが、いろいろあってソロミュージシャンに転向し、昨年TIF2013に出演して世間を驚かせた。普段はバンドセットでも活動しているが、今日は一人でライブを行うようだ。ベルハーがこれだけ会場を熱くしたあと、一人でどうやるのか、と若干不安になった。思い出したのは、2年前に新宿紅布で見た、カーネーショントモフスキーの2マンライブである。カーネーションの重厚なバンドアンサンブルに対して、トモフスキーは一人でギターや打ち込みと爆笑MC、緩急をつけた曲構成で、見事にその日の盛り上がりの最高値を出して見せたのだった。「一人でも凄い事がやれる人はいるんだな」と思ったものだった。後藤まりこ、お前はどうなんだ、という気持ちでステージを見ていた。白のセーラー服で登場した後藤まりこ。ギターの弾き語りで一瞬で会場の空気を変えてしまうのは見事だった。その後打ち込みで最初と同じ曲を歌って、MCはあらかじめ入力してきたiPhoneに言わせたりしていた。コミュニケーションとディスコミュニケーションが同時に行われているようなギクシャクした感じ。なんだか本人の経歴も考えると「歌で自己実現をしようとした女の子の挫折と再生の物語」をミュージカルで見ているような気分だった。そして盛り上がってくるとお客をつぎつぎとステージ上に上げ、客席に投げ飛ばす。客の上をクラウドサーフするおっさんたち。後藤まりこ自身も何度も何度も客の頭上にダイブして右へ左へ転げまわっていた。すごいスペクタクル映像を見ているみたいだった。

鹿鳴館のライブの後、肉体疲労が限界なので、暫くドトールで一服。鹿鳴館で体験した出来事を反芻する。呆然としてしまうほどインプットの多い濃厚な2日間だった。そういえば今日まだ何も食べていない事に気づいた。目黒駅前でみつけた、セブンイレブンの超辛いカップラーメンでお馴染みの「蒙古タンメン中本」に入ってみる。蒙古タンメンを食べた。全然食える辛さだったので、もっと辛いのにすればよかったと後悔したが、調子に乗るととんでもない辛いラーメンを出されそうで怖い店だった。