日本ツインテールアワード2015レポ(1)

2月2日「ツインテールの日」に、日本ツインテール協会の主催で行われた「日本ツインテールアワード2015」に行った。渋谷のライブスペースO-EASTO-WEST、DUOの3会場を使って行われたこのイベント。メイン会場のDUOでは各界のナイスツインテールを表彰する授賞式が行われ、O-EASTO-WESTでは総勢30組のアイドルグループが「全員ツインテール姿で」登場する。各会場の入場料が2,222円(ツインテールの女性は無料)。会場時間が午後2時2分、という細部まで拘った変なイベントである。ここに来た理由はDoll☆Elementsが出るからである。東京の滞在中にDoll☆Elementsを見られる機会がここしかないので、一念発起して見に行った。せっかくなのでDoll☆Elements以外のアイドルちゃんも見ようと思い、3会場共通券3,500円と各会場のドリンク代合計1,500円を支払う。これでフェスのように各会場を自由に出入りできるようになった。開演30分前に渋谷O-EASTに入ると、1000人以上入るフロアーは既に7割がた埋まっていた!平日なのに!正直最初は閑散としていると思っていたのでびっくりした。

1.drop

開演時間になり、最初のアイドルが登場した。このイベントの主催団体・日本ツインテール協会から去年デビューした「drop」である。人気急上昇中の注目株として名前は聞いていたが見るのは初めてである。TIFにおけるアイドリングのようなホスト役だけあって、最初からフロアーの身内的な歓声が凄い。4人のメンバーそれぞれにゲームキャラのような「属性」があるらしく、自己紹介では自分の属性と名前を名乗って客にコール&レスポンスを求めていた。楽曲もMCもゲーム・アニメ的な地下アイドルのノリだ。楽曲だけ聞くと「次世代のでんぱ組.Inc」という表現がしっくりくる。「いろはにほへとでバンパイア」という曲で舌舐めずりする振付がエロティックだった。アニメ声優界のミルキィホームズに似ているな、とちょっと思った。メンバー毎に色が違うところやバックの組織が強いところが(ミルキイホームズのバックはブシロード)。日本ツインテール協会は、なにしろこんな大きなイベントを開催できるコネクションがあるのだから、よほど何かやらかさない限り、これから絶対売れるだろうと思った。中年の自分には情報量が多すぎて疲れるというかトゥーマッチに賑やか過ぎたけど、若い客が「ここが俺達の遊び場だ!」という感じで勢いよく応援してるのは、とてもサブカルチャー的だと思った。MCで、今のライブの映像を今日の午後から物販でUSBで販売するという告知があった、これは新しい試みである。

2.FES☆TIVE

drop」に続いて登場したのは「FES☆TIVE」。初めて聞く名前だ。「ハイ!ハイ!」という客の掛け声に合わせてひとりずつステージに登場する。暖色系のカラフルな衣装をまとったチアガール系の少女達だった。いつもは8人だけど今日は7人らしい。それを見た瞬間、申し訳ないが「あかん。自分の苦手なパターンや。」と思ってしまった。自分にはアイドルグループの「好き/嫌い」の明確な基準があってそれが「人数が多いと駄目」なのである。具体的に言うと6人より多いグループが苦手なのである。GEMやさんみゅー、アイドルネッサンス東京パフォーマンスドール等々、ドルオタ評価の高いグループでも「人数が多い」という1点で駄目なのである。AKB48とか超・最悪なのである。そんなくだらない偏見にまみれた目でFES☆TIVEのショーを見ていたけど、見てるうちに徐々に楽しくなってきたのだった。O-EASTのステージの広さは大人数のフォーメーションダンスに最適だったし、歌ってないパートの子たちがステージの端で2〜3人で手を組んだり抱き合ったりキャッキャしてるのが見ていてキュンとした。それに加えて全員がしている「ツインテール」の存在感である。踊りに合わせて一拍遅れてピョンピョン飛び跳ねるツインテールが可愛いのだ。アクティブな女子のツインテールってほんといいよな〜、と完全に向こうの策略にはまっていた。
「お祭りアイドル」が売りだそうで、お祭りわっしょいモードで客席をどんどん煽っていくスタイルは非常に現場受けが良さそうだ。自分がアイドルイベントのブッキング担当だったり地方の祭りの実行委員会だったら(実際はじゅじゅとかベルハーが好きでも)絶対こういうグループを呼びたくなるだろうなと思った。あと大きなトピックとしてMCで、メジャーデビューの情報が発表され、会場からは拍手が起こった。しかし、地下アイドルにとって「メジャー」が最大のメルクマールなのは理解できるけど、地下アイドルファンにとっては、好きなアイドルがちょっと遠くなる感じがして、微妙な演者と客席の意識のズレを感じた、ように見えたのは気のせいだろうか。

3.アキシブproject

O-EASTの3番手は「アキシブproject」。これも初見である。「FES☆TIVE」に続き7〜8人がステージ上に居る大人数グループである。清楚な水色の女子高生の制服の衣装がステージ映えしていた。いかにも放課後のスクールガールたちという風情である。自分はAKB48を知らないのでアレだけど、初期AKBってこんな感じだったのかな、と思わせる王道の学園アイドル感がパフォーマンスに現われていた。女子制服を使った集団演舞の素晴らしさを再認識させられた。ステップの踏み方、指の指し方、表情の傾げ方、客席への背中の向け方とか、まるでアメリカのプロレスラーのように、細部の動作のひとつひとつに客の心に訴えるポイントがあるのだった。参考になった。それと今日感じた魅力は、はやっぱり「ツインテール」である。全員がクルクルした綺麗なツインテールをしていたのだ。実際に学校でツインテールしてたら怖い上級生にシメられるかクラス内でハブにされるだろうな。少なくとも俺の知ってる学校生活ではそうだった。と考えるとステージ上の光景がものすごく現実離れしたファンタジーな世界に見えてくるのだった。全体的に学園系アイドルの王道のパフォーマンスの良さと、青いスカートの爽やかさが印象に残る、心地よいステージだった。ただショーの後は斜に構えて「でもなーこの国には秋元康という世界で一番学園アイドルの商売が上手な人がいるからなぁ〜」と冴えない評論家気取りのオタクっぽくブツブツ呟いている自分であった。

4.READY TO KISS

たてつづけに3組もガン見してたら集中力が途切れてきたので、せっかくなので別会場のO-WESTに移動してみる。O-WESTは数百人規模のライブハウスで、1000人収容のO-EASTに比べて非常にこぢんまりしていて、行ってみたらなんと機材トラブルで進行が完全に止まっていた。客は当然殺伐としてブーブー文句を言ってるし、嫌なとこに来ちゃったな、と正直思った。結局15分遅れでREADY TO KISSが登場。TIF2014のニコニコ生放送の中継で見た時は、直前に出た「アリスインアリス」の、歌の途中で突然演劇をする、という前衛的なスタイルが衝撃すぎて、次の出番だったREADY TO KISSが何をやったのか全然覚えていない、という有様だったので、今日はそのリベンジである。実際に見たREADY TO KISSは、とても綺麗だった。女の一生には「かわいい」から「キレイ」に変わる時期がある。このグループには「かわいい」よりも「キレイ」という表現が相応しい。特筆すべき点として衣装も凄く良かった。ラメの入った白の衣装に黒が効果的に配置されていた。極めて個人的な嗜好の話になるけど、一昨日のタワーレコードnanoCUNEの衣装を見た時にも思ったけど、「白」と「黒」を効果的に使ったアイドル衣装が自分は大好きなのだ。特にREADY TO KISSは、この日見たアイドルで1番衣装が凝っていたと思う。あとで調べたらREADY TO KISSの運営母体が衣装制作を手がけていると知って納得した。パフォーマンスも華があってとても良かった。会場にスクリーンが設置されていたので、実物とスクリーンを交互に見比べたけれど、生で見る方がずっとキレイだと思った。トラブルの都合でたったの2曲だけのステージだったけど、結構楽しめた。その後2ショットチェキの行列を見たけど、女子の客に凄い人気だった。

5.合法幼女症候群

機材トラブルでこの先どうなるか分からないO-WESTは離脱して、O-EASTに戻ることにする。合法幼女症候群(通称ロリシン)は、1度聴いたら2度と忘れられないインパクトのある名前が気になっていたグループ。この日O-EASTの扉を開けて目撃した彼女たちのライブは、まるでSAかコブラのライブ会場に間違えて入ってしまったような、凶悪な重低音と暴力衝動が溢れる異様な音空間だった。キャップとオーバーサイズのトレーナーをまとった、パッと見、妹キャラっぽい女の子2人組が、デスボイスで絶叫し、汚い言葉で観客を煽ってるのだ。観客も観客で、暴力の匂いをプンプンさせた暴れたい人達が、見るからに身体に痛そうなぶつかり合いのモッシュ&ダイブを繰り返していた。ゴリラみたいな男が担ぎあげられながらステージ上のアイドルに向けて恵方巻きを食っている。非常に荒れた現場で、ついさっきまでの王道アイドルからの逸脱ぶりに、見ていてすごく興奮した。こういうアイドル現場もあるんだなと勉強になった。ただ前方にいるだろう他のアイドル目当てのファンの人はお気の毒だと思わずにいられなかった。合法幼女症候群の2人も髪形をツインテールにしていて、妹っぽくて可愛いので、見た目と音楽とのギャップが凄くあった。死んだハードコア好きの兄貴が妹に憑依してるのに違いない、と勝手に裏設定を考えながら見ていた。現在のライブアイドル界の幅の広さが見られて個人的には満足したライブだった。絶対に近づきたくないけど。

6.Apple Tale

全然知らないグループだけど、名前がかわいいから見てみようと思い、合法幼女症候群のせいで一気に暑苦しくなったO-EASTで待機。登場したのは制服姿で赤のプリ―ツスカートに赤のジャケットを着た3人組アイドル。一目見た瞬間「あ、AKBだ!」と思った。AKBとか通過してない自分の脳が考えるAKBらしさってこういう赤系統の制服姿なのだった。3人で歌い踊ってるのを見て「AKBもこの位の人数だったら推せるのに」と思った。1曲歌うとメンバー達が「暑いねー!」と言いながらジャケットを脱いで、Yシャツ姿でライブをしたのがちょっとキュンとした。MCで「今日のライブは6カ月ぶり」で「次のライブは何ヶ月後になるか分からない」と言ってて、そんな活動形態もあるのか、とビックリした。しかもそんな不定期状態なのに新曲を披露していた。メンバーの一人は「Snowdrops」というグループと掛け持ちしていて、この後O-WESTでライブをするのだそうだ。さらに最後の曲ではもう一人の助っ人が登場。自由奔放なグループだなー。と思った。あと個人的にだけど、最後の曲で見られた「4人フォーメーションの学園アイドル」という絵面は、アイドルグループの最も理想の形態だと思った。大げさに言えばアイドルグループの最終解答を発見してしまった感じである。どうやらドリンク券で飲んだ氷結が効いてきたようだ。

7.椎名ぴかりん
Apple Taleの次に登場するのは、椎名ぴかりん。TIF2014の中継で見た事のあるモデル兼ソロアイドルだ。ツインテールが持ち味の彼女にとって、ツインテールアワードはある意味ホームゲームである。一人でこの広い会場、どんなステージをやるんだろうと注視していたら、2人の死神が大きな旗を掲げて登場してぐるぐる廻り、そこに大鎌を持った悪魔っ娘コスの椎名ぴかりんが現れる、という、手間暇のかかった大仰な登場だ。彼女の悪魔っ娘コスはこの日のアイドル中で一番露出の高い、攻めてる衣装だった。2人の死神ダンサーを従えたライブパフォーマンスは音がアキバ系の騒がしい感じで正直そんな好みじゃなかったけど、突然デス声を出したり、MCで「自称・魔界から来た2万歳」という、今時珍しい不思議ちゃんキャラを造っているあたりに、「まだ若いのに地下アイドルマナーに忠実な感心な娘じゃないか。」と内心で応援していた。通して見ていて、「渋谷=秋葉原」を体現したような彼女の存在感が、このイベント全体の「ヘソ」を担っていたと思う。ただ、アイドル全員がツインテールにする、という縛りのせいで、本来、彼女を目立たせる記号であるはずの「ツインテール」が埋もれて目立たなくなってしまう、というのは想定外だったと思う。あとステージにお立ち台がセッティングされてたので何に使うのかと思ったら、終盤にたて笛を吹いていた。最後にフロアーの客を全員土下座させるという演出もあった。自分は逃げた。そういうのは苦手なのだ。